第75回カンヌ国際映画祭(2022年)の結果

世界3大映画祭のひとつである第75回カンヌ国際映画祭が、現地時間2022年5月17~28日まで開催されました。コロナウイルスの流行が落ち着き、以前のような活気を取り戻した今年の映画祭。今回は、3年ぶりに完全復活を果たした第75回カンヌ国際映画祭の受賞作品や今年ならではの傾向を紹介します。

第75回カンヌ国際映画祭(2022年)受賞結果一覧

早速ですが、受賞結果をリストで確認していきましょう!

コンペティション部門

パルムドール(最高賞)『TRIANGLE OF SADNESS』
グランプリ賞(次点)

※2作品同時受賞

『CLOSE』

『STARS AT MOON』

審査員賞

※2作品同時受賞

『THE EIGHT MOUNTAINS』

『EO』

監督賞パク・チャヌク(『DECISION TO LEAVE』)
男優賞ソン・ガンホ(『ベイビー・ブローカー』)
女優賞ザーラ・アミル・エブラヒミ(『HOLY SPIDER』)
脚本賞タリク・サクレ(『BOY FROM HEAVEN』)
75回記念賞『TORI AND LOKTA』

ある視点部門

最高賞『The Worst Ones』
審査員賞『JOYLAND』
監督賞アレクサンドル・ベルク(『METRONOM』)
脚本賞マハ・ハジ(『MEDITERRANEAN FEVER』)
俳優賞ヴィッキー・クリープス(『CORSAGE』)

アダム・ベッサ(『HARKA』)

カメラ・ドール(作品)『WAR PONY』
カメラ・ドール(監督)ジーナ・ギャメル(『WAR PONY』)
カメラ・ドール特別賞『PLAN75』早川千絵

2022年のカンヌ国際映画祭について

コロナパンデミックで中止となった2020年、バカンスの時期を避け厳粛に開催された2021年を経て、コロナの影が薄くなった2022年の映画祭は3年ぶりに熱狂に包まれました。開催地のフランスではマスク着用の義務がなくなり、出演者や映画関係者たちがマスクなしでレッドカーペットの上を歩くことのできた今回の花道には、きらびやかなドレスに身をまとった俳優陣や多くの報道陣たちがカメラを向ける様子を見ることができ、厳しい冬を耐えた映画界に春の訪れを感じさせました。

今年の傾向

カンヌ国際映画祭は、大衆の意見を参考にするアカデミー賞とは異なり、少数の映画関係者による審査委員のディスカッションで受賞作品が決定します。それゆえ、その年の審査委員たちの好みが色濃く反映される特徴があります。カンヌ特有の社会的な問題を取り扱った作品が多い中でも、今年の受賞作は特に人間の善悪について深く考えさせられる作品が目立つ傾向にありました。

平和への祈り

現在も戦況が厳しいウクライナ侵攻に対して、ロシアを支持するジャーナリストやロシア当局の関係者の参加を認めないなどの異例の措置をとった今年の映画祭。オープニングセレモニーでは、ウクライナのゼレンスキー大統領がチャップリンの名作『独裁者』を例に出して「映画で自由の価値を示してほしい」とライブメッセージを送りました。ウクライナ東部の町・マリウポリの人々の生活を描いた映画『マリウポリス』(2016年)の続編を撮影していたリトアニア人のドキュメンタリー作家・マンタス・クヴェダラヴィチェス氏が戦火のさなかにロシア軍の攻撃によって亡くなったことを受け、婚約者の女性がそれまでの映像を編集した『マリウポリス2』を追悼の意味を込めて上映。また、レッドカーペット上に上半身裸の女性が現れ、ロシア軍の戦争犯罪を訴えるというハプニングもあり、反戦メッセージが色濃く残る映画祭となりました。

日本の躍進

2018年『万引き家族』でパルムドールに輝いた巨匠・是枝裕和監督が手掛けた韓国映画『ベイビー・ブローカー』がコンペティション部門に、尊厳死の問題に焦点を当てた新人・早川千絵監督による初の長編映画『PLAN 75』が「ある視点」部門にそれぞれノミネートされたことも話題になりました。

『ベイビー・ブローカー』では主演のソン・ガンホが男優賞を受賞し、『PLAN75』は見事カメラ・ドール特別賞を受賞。また、日本でも大ヒットを記録し社会現象を巻き起こしたコメディ映画『カメラを止めるな!』のフランス版リメイクがオープニング作品として上映され、笑いの絶えない雰囲気の中で観客たちを魅了。日本人監督や日本の優れた作品が評価される結果となりました。

まとめ

今回は華やかな雰囲気に包まれながら開催された第75回カンヌ国際映画祭の受賞作品や特徴について紹介しました。コロナの脅威が和らぎ久しぶりに活気を取り戻した映画界に思わず笑みがこぼれます。来年はどんな映画祭になるのか楽しみですね!